Beyond the Rainbow!《大須にじいろ映画祭》潜入レポート


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Beyond the Rainbow! ――《大須にじいろ映画祭》潜入レポート――

愛知県で初めてのLGBT系映画祭としてに開催された《大須にじいろ映画祭》が、盛況のうちに幕を閉じた。“LGBT”とは、それぞれ女性同性愛者(Lesbian)・男性同性愛者(Gay)・両性愛者(Bisexual)・性別越境者(Transgender)の頭文字で、《大須にじいろ映画祭》では性的少数者をテーマにした作品9本(長編4本・短編5本)を2015年5月23日・24日の二日間に渡り上映した。
上映された映画は殆どが愛知県初公開作品、しかも日本初公開作品や完全新作も含まれるとあって、メイン会場の第1アメ横ビル(名古屋市 中区)4F会議室には、大勢の観客が詰め掛けた。
(画像左より、野本梢監督、木場明義監督、いとう菜のは(映画祭ボランティア))

【長編作品】
『Sweet Eighteen(甜蜜18岁)』(2013年/中国/85分/監督:何文超)※日本初公開※
「『Sweet Eighteen』は2013年の北京映画祭で上映された作品で、日本では《大須にじいろ映画祭》が初公開となります」(秦勤(シンキン):字幕翻訳協力)
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『BODY TROUBLE 男が女になるビョーキ?』(2014年/日本/90分/監督:浜野佐知)※愛知初公開・R15作品※
「先ずは、男性の皆さん、ごめんなさい……こんな映画を撮ってしまって(笑)。でも、この映画祭に来てくれる男性は「俺はオトコだ!」って振り翳して生きている方じゃないと思います。私は、40年以上ピンク映画を400本くらい撮ってきた監督です。男の為に股を開いてきたような女のセックスの現実から女自身を解放して、女の手に女の性を取り戻そうと言うテーマをライフワークにして撮ってきました」(浜野佐知:監督)
「『BODY TROUBLE』は最初はピンク映画として始まった作品で、ピンク映画としては公開されているんです。僕はテーマ自体が非常に面白かったので、自主製作のパートを増やしてこう言う映画になったんですが……監督と意見が合わないものですから(笑)、普段は脚本だけなんですけど構成・脚本と言うことになりました。非常にメッセージ性が強く“前へ前へ”と言う浜野監督の作品ですが、今回の作品に限っては僕寄りの作品として成立してるかと思います」(山﨑邦紀:脚本)
(画像左より、浜野佐知監督、山崎邦紀、江尻真奈美(映画祭代表))

『Call Me Kuchu ウガンダで、生きる』(2012年/アメリカ・ウガンダ/87分/監督:キャサリン・フェアファックス・ライト、マリカ・ゾウハリ・ウォロール)※愛知初公開・ドキュメンタリー作品※

『四年間(Fyra år till)』(2010年/スウェーデン/83分/監督:トーヴァ・マグヌソン=ノーリング)※愛知初公開※
「スウェーデンだけでなく北欧は、ゲイとかレズビアンに凄くオープンで、早くから色々な取り組みをしてます。ご存知だと思いますが、今では結婚も出来ますし、子供も持てます。日本では渋谷区で同性の婚姻届を認める検討をしていると言いますが、まだまだ道は長いかなと思います。男性の育児休暇のこともそうですが、日本では制度が出来ても実行するまでに凄く時間が掛かるみたいですね。こう言う映画を観に来てくださる方も含めて、段々広がってくれればと思います。『四年間』は2年前スウェーデン大使館とスウェーデン文化交流協会が主催した【スウェーデン映画祭】で上映されたんですけれど、非常に面白い映画だったんで、そこだけで終わってほしくないと思っていたんです」(渡辺芳子:北欧映画専門家・『北欧映画完全ガイド』著者)

【短編作品】
『くらげくん』(2009年/14分/監督:片岡 翔)※特別招待作品※

『空白』(2015年/24分/監督:松山昴史)※新作※
「2013年からやっている“Categolibidorize”と言う、音楽、映像、インタラクティブなウェブサイト、パフォーマンスとインスタレーション……色んな要素から成っているプロジェクトの一環として、今回のショートフィルムを作らせてもらいました」(松山昴史:監督)
「御飯を食べるシーンは僕の中では普通の日常の御飯だと思っていたんですが、出てきたのはワインとオードブルみたいなメニューだったんで……何だか挙動不審になってしまいました(笑)」(mini-oni:出演)

『友達』(2009年/13分/監督:小田 学)

『渚の妖精たち』(2010年/14分/監督:木場明義)
「役者さんと一緒に、新宿のショーパブに行って研究しました。役者さんたちは、最初“しぶしぶ”なんですけれど、メイクした途端にノると言う(笑)……車の中のシーンなんて僕が居ない方がアドリブぼんぼん出てくるような感じで……撮影終わった後、「監督……僕、メイク落としたくありません!」ってよく分からない情熱を訴えられたりしました(場内笑)」(木場明義:監督)

『私は渦の底から』(2014年/27分/監督:野本 梢)
「作った経緯は、友人にトランスジェンダーの子がいたんですが一緒に居た頃は全然気付かなかったんです。彼女……今は彼ですが、彼がどんな思いをしてたのか気付けずにいたなって言うのがありまして。独り善がりな目線になってしまってると思うんですが、セクシャル・マイノリティの方を応援したい思いで作りました」(野本 梢:監督)

映画祭1日目の夜は、サブ会場のシアターカフェ(名古屋市 中区)に場所を移し、交流会が執り行われた。
“飛騨なっとく豚”の提供により、牝豚と去勢した牡豚との食べ比べなる珍しく大変美味しい体験も出来た。《大須にじいろ映画祭》は、フードにも趣旨が色濃く反映されていたのだ。

「世界の色々なLGBT映画祭に行ったけど、こんなことを聞いたんです。「我々は社会的には不自由だけど、精神はこんなに自由だ!」と。是非みんなで共有していければいいなと思います。《大須にじいろ映画祭》を応援して、また来年もみなさんに会いに来たいと思います」

浜野佐知監督の言葉に、出席者はグラスを置き、大きな拍手を送った。
参加者はLGBTだけでなく一般の映画ファンも多く、性差を、そしてマイノリティ・マジョリティの垣根を越えて交流する様子は、まさに《大須にじいろ映画祭》の精神そのものであった。

取材 高橋アツシ 小林麻子

≪大須にじいろ映画祭≫
シアターカフェ公式サイト

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