騙し騙され、喰らう不意打ち!『3人の信長』レビュー



カリスマ的な存在で知られる戦国武将、織田信長。様々な伝説が語られるなかでも有名なのが、今川義元が率いる2万5千人とも言われる大軍に対し、3000人程度の少数でありながら討ち取った、桶狭間の戦いである。

しかし、それだけ知っていれば十分。本作はタイトルそのまま「3人の信長」による騙し合いをコミカルに描いており、筆者同様、歴史に疎くても楽しめる内容であることをはじめに言っておきたい。

信長への復讐心を燃やしていた元今川軍の蒲原氏徳(髙嶋政宏)は、小さな村に潜み、ついに捕まえた「信長」(TAKAHIRO)の首を斬ろうとしていた。が、その瞬間もう一人の「信長」(市原隼人)、さらにはもう一人の「信長」(岡田義徳)も現れる!

混乱する蒲原の前には、捕えられた3人の信長。本物の首でなければ笑いものになってしまう蒲原は、2人が影武者と確信。おのおのが本物だと猛アピールするなか、真実をあぶり出そうと様々な手を使って口を割らせようとする――。

頭の切れた発言で周囲を挑発し、いかにも本物らしさのある1人目の信長を演じるのは、役者としても確実に実力を高めている、EXILEのTAKAHIRO。貫録のある立ち振る舞いで、これも信長っぽい2人目を演じるのは、強さと優しさの眼差しを兼ね備える熱血漢・市原隼人。読めない言動を繰り返し、ダークホースな怪しい3人目には、挙動不審な役に定評のある岡田義徳。……で、どれがホンモノでどれがニセモノ!?

歴史上の偉人を面白おかしく映した本作で、脚本とメガホンを握るのは「HiGH& LOW」シリーズで脚本を担当した渡辺啓。自称・信長たちによるコンゲームには、翻弄される蒲原と同じように、客席もあれやこれやと推理してしまうストーリー構成。3者3様でかぶらないキャラクターゆえに、読めない!

実際の人物を知らないため、“信長って、もしかしたら本当はこんな感じの人かもしれない”と、見聞きする情報で判断することへの不意打ちを喰らう。なぜ命がけで影武者になったのか、その背景も徐々に紐解かれながら、最後の最後には思わずニンマリするはずだ。
エンドロール後こそが、アッパレ!

文 南野こずえ

『3人の信長』
©2019「3人の信長」製作委員会
配給:HIGH BROW CINEMA
9月20日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開!

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