ふたりの未来は国境を越えられるか——『LEONIDAS』レビュー
東京・代々木の空にそびえるドコモタワー。その姿は、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングを思わせる。橘潤樹監督の映画『LEONIDAS』で繰り返し映されるこの塔は、ニューヨークを夢見る二人の若者にとって、希望と、そこまでの隔たりを感じさせる風景だ。

在日韓国人のヒロ(門間航)は、親友ソウマ(仲野温)の死を機に音楽を離れていた。SNSを通じて出会ったデジタルアーティストのアオイ(永田凜)も、裕福な家庭に育ちながら、家族の中で孤独を抱えている。二人は互いの存在に居場所を見いだし、ヒロは再び音楽制作へと向かう。やがてニューヨークでの音楽活動の機会が訪れ、二人は共に渡米する未来を思い描く。
音楽や絵は、言葉だけでは伝えきれない思いを届け、人と人を結びつける。本作でも、表現することが二人の距離を縮めていく。しかし、心が通じたからといって、望む場所で共に生きられるとは限らない。国籍や家庭環境、自分では選べなかった背景が、二人の未来に影を落とす。誰かと出会って生きる意欲を取り戻すことと、その人と生きる道を選べること。その間には、個人の気持ちだけでは埋められない距離がある。

題名の「LEONIDAS」は、強大な敵に立ち向かった古代ギリシアの王に由来する。その名には、大きな力に阻まれながらも、自分たちの未来を選ぼうとする若者の姿が託されている。二人が共に生きようとするとき、国籍の違いや家族の反対が、その願いを阻む。誰と、どこで生きるのか。自分で決めたいはずのことを自由に選べない二人の姿が、恋愛を超えた問いを私たちに投げかける。
代々木にいながら、ニューヨークの面影は見える。けれど、見えることと、そこへ行けることは違う。その隔たりを前に、ヒロとアオイはどんな未来を選ぶのか。二人が互いに見いだした希望の行方を、ぜひスクリーンで見届けてほしい。
文 山崎裕太
『LEONIDAS』
出演:門間航、永田凜、仲野温、モクタール、サシニ、朝香賢徹、辻しのぶ、嶋村友美、鈴木ひろみ、竹内達麒、タカハシシンノスケ、犬塚マサオ
監督:橘潤樹
©︎10NY
2026年10月16日(金)新宿武蔵野館ほか 順次公開