人の数だけ道がある『ジャンクション29』レビュー



29歳。ある程度の結果を出した者、それなりの者、夢を追いつづける者。さまざまな形と速度で道を歩みながらも、周りを見回しては一喜一憂して、この先について自問自答をはじめる年頃。

成人して1つの区切りになる30歳を目前にした若者たちの等身大を描いた本作は、名古屋発の人気エンタテイメントグループ「BOYS AND MEN」の田中俊介、水野勝、小林豊、本田剛文がそれぞれ主演を務めるオムニバス映画。テレビ愛知・ホームドラマチャンネル他で放送されたドラマ3話に加え、劇場公開版では3人と交差するもう1人のストーリーが追加されている。

主演・田中俊介の「ツチノコの夜」は、同窓会で憧れだった同級生との再会をきっかけに、大人になったからこその奮闘を菅原大吉、本多力、佐藤玲らとともに、下ネタ全開でドタバタを繰り広げる。「結婚の条件」では、主演を務める水野勝が結婚相談所のスーパー仲人役。徐々に結婚への意識が変わっていく様子と張り合いを、細田善彦、中村中、山田キヌヲ共演で脇を固める。

大人になってからの同い年にはなぜか親近感が湧き、互いの過去を知らない分、余計なことに縛られないでいられる。その反面、変なカッコつけをしたり、新たな一面をさらけ出せたり、素直になれる部分もあったりする。昔からの友達とはまた異なる自分の存在を覗かせてくれる。

本田剛文主演の「バズる」は、動画配信で借金をチャラにしようとする男の失敗と成功のスリルを、テンポよく映し出す現代ならではのシチュエーション。新たに追加された小林豊が主演となる「ジャンクション」では、3つの物語との交差を描きながらも、すべてを投げ出そうとする青年の心情を優しく包みこむように映し出している。

若さを武器にできた20代から、実力や経験を問われる30代に突入する僅かな瞬間には、諦めや後ろめたさを感じながらも、もう30歳、まだ30歳を都合よく使い分けてしまえと捉えるのも1つの手である。

どの主人公も29歳。誰かに感情移入しながら振り返る人もいれば、これから迎える人もいるだろう。本当に十人十色だなと改めて思い知ることができるはずだ。迷いや葛藤の少ない無関心な生き方よりも、自分の人生できちんと主演であることを改めて考えずにはいられない。

分岐路はこれから幾度も訪れるゆえに、まだまだ挑戦できる年頃である。筆者も長年勤めた会社を29歳で辞め、何の宛ても経験もなくこの道を選んだことを思い出した。

文 南野こずえ

『ジャンクション29』
©2019『ジャンクション29』製作委員会
2月22日より渋谷シネクイント、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場ほか全国公開

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