1月28日よりファンが待ちに待っていた【ROMAN PORNO REBOOT(ロマンポルノ・リブート)】の上映が始まり、名古屋シネマテーク(名古屋市 千種区)の2017年は真冬とは思えぬ熱気に満ちている。
【ROMAN PORNO REBOOT】とは、2016年11月に45周年を迎えた【日活ロマンポルノ】レーベルが世に問う渾身の“再起動”企画である。往年の撮影条件に近い、
・上映時間80分前後
・10分に1回の濡れ場
・製作費は、全作品一律
・撮影期間は、1週間
・完全オリジナル作品
・ロマンポルノ初監督
という6つのルールが設けられ、塩田明彦監督、白石和彌監督、園子温監督、中田秀夫監督、行定勲監督という豪華な面々が、新世代の再起動プロジェクトに名乗りを挙げた。

『牝猫たち』(84分/R18+)の白石和彌監督は、合同取材の折にこう語っていた。

「日活がネタ被りしないようにしていたので、他作品がどんなジャンルなのかは確認していましたんですが……園監督の作品は「説明しても分からないと思います」と言われました(笑)」

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そんな園子温監督の『ANTIPORNO(アンチポルノ)』(78分/R18+)が、いよいよ2月11日(土 祝)名古屋シネマテークで公開初日を迎えた。

『ANTIPORNO』ストーリー:
黄色い天井、青いベッド、黒いソファ、赤い個室……色の洪水のような部屋に、アバンギャルドなキャンバスが無造作に壁に立てかけてある。部屋の主であるアーティスト・京子(冨手麻妙)に、今日も分刻みのスケジュールを伝えるマネージャー・典子(筒井真理子)。楽しげにピアノを奏でる妹は、プロジェクターから映射される色褪せた動画は、“過去の悪夢”なのか、“舞台装置”なのか……京子の“世界”は、色彩だけでなく混沌も色濃くなっていく――。

名古屋シネマテークは、ご存知の通り園子温監督の“故郷”。『ANTIPORNO』は2/17(金)まで1日3回の上映スケジュールなのだが、園監督は初日2回も舞台挨拶に立ち、変わらぬ“地元愛”を示してみせた。生憎の雪を押して名古屋シネマテークを超満員で埋め尽くした映画ファンは、割れんばかりの拍手で歓迎を表した。

MC. この映画は、日活の方から来た企画だったんですか?
園子温監督 はい、そうです。僕もにっかつロマンポルノは映画館でたくさん観てきたんですけど、ノスタルジーに浸りながらまた現代でポルノ映画を作る意義を感じられなかったんで、最初はお断りしたんですが……「ポルノ映画ではなくて“アンチ・ポルノ”っぽいのだったら良いかな」とポロッと言ったら、「それで良いです」って感じになったんです。それなら、しがらみから解放されそうだったので、作ろうと決めたんです。

MC. 園さんにとって“アンチ・ポルノ”な部分は、どこなんですか?
園監督 AV(アダルトビデオ)も無かった当時、セックス文化を観るなら映画館しか無かったんですね。今はもう携帯でエッチな場面も観れる時代に、わざわざポルノ映画を観るのはノスタルジーしかない、っていうのが先ずあったんです。そもそもにっかつロマンポルノはそのままで良いし、リバイバルで同じような四畳半的な、或いは団地妻的な映画を作るってことは面白くないなと思ったんですね。あと、これが一番大きいんですが、日本って女性を消耗品とする文化を形成してきたところがあるので、それに反して……アンチしていった方が映画として面白いと思ったんです。ただただエロいって訳ではなくて。だから、“脱がす映画”ではなく“着る映画”にしたんです。そこは、まさに“アンチ・ポルノ”だと思いますね。ただ、ポルノっぽい物も出そうと思ったんで、国会議事堂を出しました。あれほどポルノな物はない、と(場内笑)。

MC. 確かに、かつてのにっかつロマンポルノは、男性の観客が楽しめるように作られたものですよね
園監督 アメリカのAVでは、全然違うんですよ。女性も積極的にAVを観るので、男の喘いでいるところもほぼ同じ分量あるんですよね……僕は、観る時すごく困るんですけど(場内笑)。日本の場合は男性だけが観るものとして撮られているので、男性の顔をぼかして女性しか写ってないのも結構あります。性文化に関しても歪つではないかと思うんですよね。『ANTIPORNO』では、あまり観客を意識することはありませんでした。自分にとっての映画を撮ったら、こうなったんです。

MC. キャストのこともお聞きしたいんですが
園監督 冨手麻妙は、『新宿スワン』(2015年/139分)で、7秒くらい伊勢谷(友介)くんが街でナンパする場面で出てもらったんです。それが、僕は現場で凄く印象に残ってたんです。昔『時効警察』(2007年)で満島ひかりを見付けた時もそうだったんですが、「この子、もしかして何か出来るかな」って思ったんで、少しずつ役をデカくしていったんですね。そろそろ主役をと思ったものの、まだ若いからポルノ映画はキツいかと思ったんですけど……本人が「どうしても演りたい」って言ってくれたんです。筒井真理子さんは、実はアメリカ資本で撮ってまだ日本では公開されていない作品(オムニバス映画『Madly』内『Love of Love』)で主役をやってもらってるんですね。配役は、自然に決まりました。冨手麻妙と筒井真理子、この二人で映画は完全に出来ると思いました。凄く低予算の映画なので、それを逆手に取って何か出来ないかと……例えば『十二人の怒れる男』(監督:シドニー・ルメット/1957年/96分)のように、一室の中で成立する世界観を考えました。

MC. 園さんの映画はリハーサルを重ねて撮る印象がありますが、今回もそうですか?台詞も凄く多いですが
園監督 裸が多いので、難しい部分はありました。リハーサルから裸という訳に行かないので、服を着たままやると、なかなか感じが掴めなくて……でも、やはりリハーサルはやりました。筒井さんも、よく脱いでくれました。脱いでも大丈夫かと非常に心配してたんですが、お姉さんに電話したら「今脱がなくてどうするのよ!」って言われたそうで(場内笑)。

MC. 他に、撮影で難しいところはありましたか?
園監督 1週間くらいで撮ったんですが、室内なのに雪が降ったり、シャボン玉が吹いたり、色々ありまして……中でも、ペンキが大変でした。スタジオ撮影でセットの天井を外してかなり高いところから物凄くたくさんのスタッフが落としたので、冨手はかなり痛かったと思います(笑)。痛い上に目に入るわ、口に入るわで……僕は「叫んでろ!」って言ったし、ペンキを落とす時は「顔を集中攻撃しろ!」って指示したので。一週間くらい鼻水はカラフルだったそうです(場内笑)。「今日は、緑色だわ」「今日は、ピンクだ」とか……地層が出来たみたいになったそうで(笑)。一発しかやれないですし、僕よりも冨手が大変だったと思います。僕は1週間の撮影だったので、凄くバランス良く出来ました。僕は1日でエネルギー注ぎ込んじゃうタイプの人間なんで、2ヶ月も撮影が続くと現場から逃亡したくなるくらいヘトヘトで……1週間の撮影だと、クランクアップの時に息切れしないで済むのが凄く良かったです。これから制作費があろうがなかろうが、最長1ヶ月にしようと思ってます(笑)。

MC. 78分という尺の割りに、凄く濃密な映画ですよね?
園監督 スタッフも、「2回目が面白い」って言ってます。1回目だと巨大なクエスチョンだったものが、頭の中で構築出来るので。「そういうことだったんだ!」って気付いてもらえる台詞もあると思います。

MC. 今後の展望など、如何ですか?
園監督 低予算でも全力で出来る映画をどんどん作ろうと思っています。……ってことは、毎回(名古屋)シネマテークでやるってことですね(場内笑)。

自己否定と自己愛がぶつかり合い、実像と虚構が相食む――冨手麻妙が新人とは思えない美事な演技で、狂った部屋から出られない京子を演じ切る。彼女を支え、翻弄するのは、変幻自在の肉体言語で魅せる筒井真理子。『ANTIPORNO』とは、撮った作品が全て問題作となる“永遠の問題児”園子温が放つ、極彩色の過激作である。

色の洪水を、音の濁流を、心の漆黒を、生の混沌を……存分に味わい尽くしてほしい、映画館の暗闇の中で。
『ANTIPORNO』、名古屋シネマテークでは3/3(金)までの上映が決定している。

取材・文:高橋アツシ

©2016 日活
『ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』公式サイト
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