北野武、映画業界をバッサリ斬った!『日本の映画がダメになる』
『第27回東京国際映画祭』にて、第1回“SAMURAI(サムライ)”賞の授賞者である北野武監督を招き、若手映画監督からの質問に答えながら「日本映画の今と未来」について語りあうスペシャルトークイベントが行われた。北野武監督、トニー・レインズ、クリスチャン・ジュンヌ、若手監督8名(『PFFアワード2014』『第26回東京学生映画祭』『第8回TOHOシネマズ学生映画祭』の受賞監督)が登壇。(2014年10月25日 六本木ヒルズ)
北野監督は「漫才大賞をもらって、映画の賞をもらって、前科までもらったっていうのは、日本では俺しかいないんで。芸能界の歴史そのもの。汚点そのものということで光栄です。正直、映画に賞をつけるのは、俺はずっとおかしいと思っている。映画祭に招待されればそれだけで栄誉で、選ばれただけでいいんじゃない」と、登場早々に自虐トークで会場を沸かせた。
また、「アカデミー賞ってのは『日本アカデミー賞』で推薦された作品しか外国語映画部門にノミネートされない。自分の映画がアカデミー賞に推薦されたことは一回もない。『日本アカデミー賞』の最優秀賞はたいてい、松竹、東宝、東映・・・こんな感じで。それ以外の映画が最優秀賞を獲った事はほとんどない。全部持ち回りだから(笑)誰が選んだかというと、アカデミー賞の会員。アカデミー賞の会員なんてどこにいるんだと。そうやって汚いことばっかやってるから、日本の映画がダメになる。とにかく、大手の映画会社に巻き込まれないように(笑)」と、若手監督たちにエールを送りつつも、サムライ賞だけに日本映画業界をバッサリ斬った!
Q.北野監督が低予算で映画を撮るなら、どのような作品ですか?
北野監督:ちょっとショックを与えるような映画を作りたい。社会が注目するような。「慰安婦男」というのもありかなと(笑)大事なのは、作り続けること。自分のしたいことをして、なおかつ生活できることに感謝すること。
Q.絵作りよりも芝居を作れと教えられているんですけど、お芝居を撮るということをどう考えていますか?
北野監督:劇場の空間の中でそういう風に見せるのは技術。監督は役者以上に色んなことを知らなければいけない。映画ってそういうもんだから。
Q.映画監督は映画では食べていけないと言われていますが、覚悟を決めて当たり前と考えるか、映画界全体が仕組みを作るべきか?
北野監督:どうしたら持続できるのかと。映画に尽くすのではなく、逆に映画に尽くさせる。苦しいときに映画が当たったら、それを次の映画に全部使うくらいでいいと思う。
Q.作品を作る上でしっかり人間を描いて作品を作るべきだと思いますが、どう思いますか?
北野監督:自分はどういうことをやりたいかで決めればいいだけで、自分が描きたいものを描けばいい。好き嫌いがあるからね。他の嫌だと思う物も認めなきゃいけないという余裕も必要かなと。原子爆弾と同じで圧縮しないと広がって爆発しないんで、1つに集中すると同時に、解放するときは周りを見なきゃいない。そういう気持ちで作るべきかなと。
Q.作品を作る時、不自由さを意識するのですが、制約や制限ってものをどう思いますか?
北野監督:サッカーって、あれほど不自由なゲームはないし、その中で無限の方法を考える。そうすると自由という事は本当に必要なのか。人間は生まれて、どうせ死ぬんだ。社会的な制約を破ることなく、すれすれで生きることを考えたほうがいい。
さらには、「若手の監督に何が必要か?」という話題では「作るのは自分だから、自分の世界を構築する事がベスト。色んな人の意見はあくまでも参考に。頑張れとは言いません、若い芽は早く摘んでおいた方がいいですし(笑)」と最後まで世界のキタノらしい語りを通した。
取材・スチール撮影:南野こずえ
『第27回東京国際映画祭』
会期:2014年10月23日~10月31日 http://2014.tiff-jp.net/ja/