愛知県初のLGBT系映画祭、『大須にじいろ映画祭2017』が開催され、盛況のうちに幕を閉じた。(2017年8月19日・20日 シアターカフェ)
“LGBT”とは、それぞれ女性同性愛者(Lesbian)・男性同性愛者(Gay)・両性愛者(Bisexual)・性別越境者(Transgender)の頭文字で、『大須にじいろ映画祭2017』では性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)をテーマにした短編作品が上映された。

「映画を通じて、全てのどんな人でも自分らしく生きられる社会になれば良いなと思って始めた映画祭です。2015年から今年で3回目になります。来年から2月に移行していこうと思っているので、今年はこちらの会場(シアターカフェ)で短編を中心に2プログラムを上映させていただきます」

映画祭の冒頭、実行委員会の江尻真奈美代表はそう言った。シアターカフェには、短編映画が、そして自由を謳う作品が、よく似合う。

Aプログラム 藤井三千監督特集
『鏡』(2015年/35分)
藤井三千監督 私は東京で映画監督として活動しておりますが、出身は名古屋市です。余り人には言ってなかったんですが、たまたま『大須にじいろ映画祭』の実行委員の方からお声を掛けていただいて、招待していただけることになりました。この作品は映画祭でコンセプトにされているLGBTがテーマで、映画学校の卒業制作として作った作品です。学校で一緒だった栗田さんありきで撮ろうと思ったので、そこから他のキャストを探し始めました。ネットから柴さんが私を見つけてくださって、オーディションという形で選ばせていただきました。相手役の桑山こたろうさんは、役者が集まる飲み屋があって、そこで「エキストラでも良いから、出させてよ!」って、友情で出ていただいて。人間って顔が変わるものですから今では違うんですが、(栗田さんと桑山さんは)お会いした時は似ていたので、似ている二人でやろうと思ったんです。
栗田一生(主演) 僕も映画学校に入って、映画というものを学び始めて日が浅くて、よく分からないまま現場で急き立てられつつ演った感じでした。映画の内容的に、出演者との距離の取り方が凄く難しかったです。ただ仲良くなれば良い訳でもないし、かといって突き放すのも違いますし。今思えば、もっと色々と話し合っても良かったと思いますね。
柴奏花(出演) 私は小中高大とずっと女子高だったんですけど、大学院は殆んど男性しかいないような所に行きました。その時の修士論文のテーマが「現代に於ける女装」だったんですね。昔は男らしさがないといけない世の中でしたが、今は男性も女らしくすることが周りからおかしいと言われることが無いというのが、一つの結論でした。栗田さんの役は凄く女性っぽい繊細な感性を持っていますが、それも昔だったらダサいイメージだったかもしれないけど、今の私たちから見ると凄く共感できると思います。
藤井監督 主人公の浩一の性は社会的にはマイノリティだけれど、切ない片想いはどんなセクシュアリティでも関係ない話ですので……残酷ですけど、凄く世の中に沢山溢れてる話だと。ただ、もどかしさをより感じさせるには、男性が好きな方が物語として浮き上がってくると思ったんです。

『月を、さがしている』(2014年/42分)
藤井三千監督 この作品は女性を描いてるんですが、その中にも色んな女性がいて、LGBTというテーマからもそんなに遠くないなと、自分でも改めて感じました。自分は結構そういうことを描いていきたいんだなと、ご招待していただいて気付かされました。映画作りを全く勉強せず、映画好きが高じて独学で作った作品です。機材には何が必要なのか、録音は、助監督は……何も知らないまま撮りました。音楽を乗せるどころか編集という概念もなく、「映画学校に通わなければいけない」と思いまして、短期間で夜間の映画学校に通った際、こちらの栗田さんと出会いました。
栗田一生 この作品は何度か観ているんですが、キャバクラで働いてる子がキャンバスに向かうシーンが大好きなことを、今日気付きました。『鏡』とも重なるんですが、絵であったり好きな人であったり、手の届かないものと自分との距離感を把握してしまった上でも想い続けることは出来るんだな、と。僕も、認められる、認められない、のもう一つ上を行く、別の次元で役者を続けていけたらと思います。

Bプログラム 短編集
『はだか』(2014年/7分)
藤井三千監督 映画学校在籍時代、まだ映画を作り始めて間もない授業内実習で撮った作品です。同期で入学した栗田一生さんは映像演技の俳優コースの学生だったんですが、コラボ実習という形で実現した作品でした。1日で撮影して3日で編集した、Aプログラムの『鏡』の謂わば原型です。
栗田一生(主演) (映画学校の)講評でしか観ていなかったんですけど、凄く恥ずかしかったです(笑)。

『群青に染まる』(2016年/14分/監督:岩村高志)

『ふたり』(2015年/33分)
小畑智寛(プロデュース・撮影・編集) 72分のプログラムで、我々の作品は無駄に長くて申し訳ないです(笑)。
田丸さくら監督 私は大学2年生なんですが、高校3年の時に撮った作品です。こちらの小畑さんと高校時代から映画を撮っていて、普段は彼が監督で私はプロデューサーとかスタッフだったんですが、「監督もやってみれば?」と言ってくれたことがありまして。ロケーションも祖父の家を借りて撮ったりしていて、かなり内輪で撮影したようなものだったんですが、女優さん達のお力も借りて完成することが出来ました。
小畑 田丸さんにはいつも裏方ばかりやってもらっていて、申し訳なかったんです。実はこの作品、企画から完成まで2ヶ月掛かってないんですね。33分の映画なんですが、脚本はわずか1.5ページ(場内笑)。会話は、殆んどアドリブでございます。最初は15分の映画だったんですが、皆様のご尽力によって、めでたく33分になりました。
神門実里(主演) 私は普段、女優と、女優を集めた「ノーメイクス」というアイドルグループ、二つのお仕事をやらせてもらっています。撮影の関係で金髪になっているので、『ふたり』とは雰囲気が変わってしまっていますが(笑)、怖い人になった訳ではないので大丈夫です(場内笑)。最初のシーンは1カットで、一発OKだったから良かったんですけど、2回目は演りたくないなと思いました(笑)。
小畑 本番は一発だったけど、リハは5回やってますからね(笑)。
Q. 小畑さんは、撮影もやってるんですもんね?
田丸監督 撮影がメインです!
小畑 そういうの、やめようよ……僕は、監督の指示に従っただけです(笑)。ロケハンは撮影前日だったんです。監督はホンを読みながら「ここを、こうしよう」みたいな話でカフェを見ていて、急遽「1カットにしよう!」と言い出して、それから僕はてんてこ舞いでした。
Q. 実里さんとは、元々お知り合いだったんですか?
小畑 『ふたり』がYouTubeで公開されたのは一昨年の4月なんですけど、彼女のデビューはちょうどその時期だったんですよ。
神門 そうですね、まだ何もしてなかった頃で。
小畑 呼んだところ快諾してくれて、しかも賀數美和子(現 青柳糸)さんをご紹介してくださって。今はお忙しくなって、誘っても来てくれないでしょうが……
神門 そんなことない!そんなことないですよ(笑)!

『いとしいひと』(2016年/19分/監督:丸山夏奈)

19日の夜は、『大須にじいろ映画祭』恒例の交流パーティーが開かれた。
ここで、一つサプライズが。前日が誕生日だった藤井三千監督のために、バースデーケーキが用意されていたのだ。満場の拍手の中ロウソクを吹き消す藤井監督は、照れながらも満面の笑顔で祝福に応えていた。

制作陣と観客、年齢、マイノリティとストレート、スタッフとアライ、参加者はあらゆる垣根を越えた親交を温めあった。
様々な自分らしさを確かめつつ、皆大いに笑い、大須の夜は更けていった――。

取材:高橋アツシ

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想いはセクシュアリティを越えて『大須にじいろ映画祭2017』レポートhttp://eigairo.com/wp-content/uploads/2017/08/シネマカラーズ④-600x401.jpghttp://eigairo.com/wp-content/uploads/2017/08/シネマカラーズ④-200x150.jpgシネマカラーズシネマな名古屋シアターカフェ,大須にじいろ映画祭,田丸さくら,藤井三千愛知県初のLGBT系映画祭、『大須にじいろ映画祭2017』が開催され、盛況のうちに幕を閉じた。(2017年8月19日・20日 シアターカフェ) “LGBT”とは、それぞれ女性同性愛者(Lesbian)・男性同性愛者(Gay)・両性愛者(Bisexual)・性別越境者(Transgender)の頭文字で、『大須にじいろ映画祭2017』では性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)をテーマにした短編作品が上映された。「映画を通じて、全てのどんな人でも自分らしく生きられる社会になれば良いなと思って始めた映画祭です。2015年から今年で3回目になります。来年から2月に移行していこうと思っているので、今年はこちらの会場(シアターカフェ)で短編を中心に2プログラムを上映させていただきます」映画祭の冒頭、実行委員会の江尻真奈美代表はそう言った。シアターカフェには、短編映画が、そして自由を謳う作品が、よく似合う。Aプログラム 藤井三千監督特集 『鏡』(2015年/35分) 藤井三千監督 私は東京で映画監督として活動しておりますが、出身は名古屋市です。余り人には言ってなかったんですが、たまたま『大須にじいろ映画祭』の実行委員の方からお声を掛けていただいて、招待していただけることになりました。この作品は映画祭でコンセプトにされているLGBTがテーマで、映画学校の卒業制作として作った作品です。学校で一緒だった栗田さんありきで撮ろうと思ったので、そこから他のキャストを探し始めました。ネットから柴さんが私を見つけてくださって、オーディションという形で選ばせていただきました。相手役の桑山こたろうさんは、役者が集まる飲み屋があって、そこで「エキストラでも良いから、出させてよ!」って、友情で出ていただいて。人間って顔が変わるものですから今では違うんですが、(栗田さんと桑山さんは)お会いした時は似ていたので、似ている二人でやろうと思ったんです。 栗田一生(主演) 僕も映画学校に入って、映画というものを学び始めて日が浅くて、よく分からないまま現場で急き立てられつつ演った感じでした。映画の内容的に、出演者との距離の取り方が凄く難しかったです。ただ仲良くなれば良い訳でもないし、かといって突き放すのも違いますし。今思えば、もっと色々と話し合っても良かったと思いますね。 柴奏花(出演) 私は小中高大とずっと女子高だったんですけど、大学院は殆んど男性しかいないような所に行きました。その時の修士論文のテーマが「現代に於ける女装」だったんですね。昔は男らしさがないといけない世の中でしたが、今は男性も女らしくすることが周りからおかしいと言われることが無いというのが、一つの結論でした。栗田さんの役は凄く女性っぽい繊細な感性を持っていますが、それも昔だったらダサいイメージだったかもしれないけど、今の私たちから見ると凄く共感できると思います。 藤井監督 主人公の浩一の性は社会的にはマイノリティだけれど、切ない片想いはどんなセクシュアリティでも関係ない話ですので……残酷ですけど、凄く世の中に沢山溢れてる話だと。ただ、もどかしさをより感じさせるには、男性が好きな方が物語として浮き上がってくると思ったんです。『月を、さがしている』(2014年/42分) 藤井三千監督 この作品は女性を描いてるんですが、その中にも色んな女性がいて、LGBTというテーマからもそんなに遠くないなと、自分でも改めて感じました。自分は結構そういうことを描いていきたいんだなと、ご招待していただいて気付かされました。映画作りを全く勉強せず、映画好きが高じて独学で作った作品です。機材には何が必要なのか、録音は、助監督は……何も知らないまま撮りました。音楽を乗せるどころか編集という概念もなく、「映画学校に通わなければいけない」と思いまして、短期間で夜間の映画学校に通った際、こちらの栗田さんと出会いました。 栗田一生 この作品は何度か観ているんですが、キャバクラで働いてる子がキャンバスに向かうシーンが大好きなことを、今日気付きました。『鏡』とも重なるんですが、絵であったり好きな人であったり、手の届かないものと自分との距離感を把握してしまった上でも想い続けることは出来るんだな、と。僕も、認められる、認められない、のもう一つ上を行く、別の次元で役者を続けていけたらと思います。Bプログラム 短編集 『はだか』(2014年/7分) 藤井三千監督 映画学校在籍時代、まだ映画を作り始めて間もない授業内実習で撮った作品です。同期で入学した栗田一生さんは映像演技の俳優コースの学生だったんですが、コラボ実習という形で実現した作品でした。1日で撮影して3日で編集した、Aプログラムの『鏡』の謂わば原型です。 栗田一生(主演) (映画学校の)講評でしか観ていなかったんですけど、凄く恥ずかしかったです(笑)。『群青に染まる』(2016年/14分/監督:岩村高志)『ふたり』(2015年/33分) 小畑智寛(プロデュース・撮影・編集) 72分のプログラムで、我々の作品は無駄に長くて申し訳ないです(笑)。 田丸さくら監督 私は大学2年生なんですが、高校3年の時に撮った作品です。こちらの小畑さんと高校時代から映画を撮っていて、普段は彼が監督で私はプロデューサーとかスタッフだったんですが、「監督もやってみれば?」と言ってくれたことがありまして。ロケーションも祖父の家を借りて撮ったりしていて、かなり内輪で撮影したようなものだったんですが、女優さん達のお力も借りて完成することが出来ました。 小畑 田丸さんにはいつも裏方ばかりやってもらっていて、申し訳なかったんです。実はこの作品、企画から完成まで2ヶ月掛かってないんですね。33分の映画なんですが、脚本はわずか1.5ページ(場内笑)。会話は、殆んどアドリブでございます。最初は15分の映画だったんですが、皆様のご尽力によって、めでたく33分になりました。 神門実里(主演) 私は普段、女優と、女優を集めた「ノーメイクス」というアイドルグループ、二つのお仕事をやらせてもらっています。撮影の関係で金髪になっているので、『ふたり』とは雰囲気が変わってしまっていますが(笑)、怖い人になった訳ではないので大丈夫です(場内笑)。最初のシーンは1カットで、一発OKだったから良かったんですけど、2回目は演りたくないなと思いました(笑)。 小畑 本番は一発だったけど、リハは5回やってますからね(笑)。 Q. 小畑さんは、撮影もやってるんですもんね? 田丸監督 撮影がメインです! 小畑 そういうの、やめようよ……僕は、監督の指示に従っただけです(笑)。ロケハンは撮影前日だったんです。監督はホンを読みながら「ここを、こうしよう」みたいな話でカフェを見ていて、急遽「1カットにしよう!」と言い出して、それから僕はてんてこ舞いでした。 Q. 実里さんとは、元々お知り合いだったんですか? 小畑 『ふたり』がYouTubeで公開されたのは一昨年の4月なんですけど、彼女のデビューはちょうどその時期だったんですよ。 神門 そうですね、まだ何もしてなかった頃で。 小畑 呼んだところ快諾してくれて、しかも賀數美和子(現 青柳糸)さんをご紹介してくださって。今はお忙しくなって、誘っても来てくれないでしょうが…… 神門 そんなことない!そんなことないですよ(笑)!『いとしいひと』(2016年/19分/監督:丸山夏奈)19日の夜は、『大須にじいろ映画祭』恒例の交流パーティーが開かれた。 ここで、一つサプライズが。前日が誕生日だった藤井三千監督のために、バースデーケーキが用意されていたのだ。満場の拍手の中ロウソクを吹き消す藤井監督は、照れながらも満面の笑顔で祝福に応えていた。制作陣と観客、年齢、マイノリティとストレート、スタッフとアライ、参加者はあらゆる垣根を越えた親交を温めあった。 様々な自分らしさを確かめつつ、皆大いに笑い、大須の夜は更けていった――。 取材:高橋アツシシネマから、はじめよう。