天使が微笑みかける時 『シネマの天使』舞台挨拶レポート


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2015年11月7日、名演小劇場(名古屋市 東区)3階サロン1(105席)で割れんばかりの拍手の大音響が響き渡った。この日、全国ロードショーが封切となった『シネマの天使』(監督:時川英之/94分)の初日舞台挨拶が行われたのだ。
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MC 監督は、広島にお住まいなんですよね?(MC:映画パーソナリティ・松岡ひとみ)

時川英之(監督・脚本・編集) 「はい。東京とか海外にも居たんですけど、最近は地元の広島に住んでます。『シネマの天使』は福山市に122年あった大黒座(シネフク大黒座)の物語なんですけど、大黒座の方が「もう大黒座を壊しちゃうんで、折角なんで広島出身の映画監督に何か作って欲しいんです」と言うことからこの企画が始まりました。最初はただ撮影するだけだったんですけど、打ち合わせをしてたら大黒座の方が泣き出されて……皆さん、映画館に凄く強い想いがあったんですよね。「そう言う想いがあるのなら、大黒座を舞台にした映画館の映画を壊す前に撮っては」と言うことで、この映画が実現したんです。本当に時間の無い中だったんですけど、益田さんがすぐ「やるわよ!」って言ってくれたんです」

益田祐美子(プロデューサー・製作総指揮) 「資金が無いと、最終的に映画が出来ないんですね。劇場が無いと、映画を観てもらえないんですね。私が最初に作った日本とイランの合作映画(『風の絨毯』2003年)は掛けてもらう所がなかなか無くて苦労した思いがありますので……その劇場が無くなると聞いて、これは何とかしなくちゃいけないと言うことで、資金集めを……1週間で(笑)」

MC 1週間ですか!?

時川監督 「映画は脚本書くだけで半年、一年……そこからお金を集めて、また一年……普通はそう言う話なんですけど、この映画は違いました。7月末くらいに「やりましょう」と言う話になり益田さんに動いてもらって、9月の半ばに大黒座を壊すと言うスケジュールだったんですよ。8月ずっと脚本書きながらキャスティングして、藤原令子さんにお願いして……撮影の1週間か10日前ですよね(笑)?」

益田 「脚本をすぐ理解して演技が出来る、能力の高い女優さんじゃないと!って」

藤原令子(主演“明日香”役) 「……割りと一生懸命でした(笑)。ただただ一生懸命、台詞と流れを頭に入れてました。初主演だったんですけど、広島に行く用意もしなきゃいけない、撮影の台本も頭に入れなきゃいけない……「主演作って、こんなにもバタバタするもんなんだ!」って、最初は思いました(笑)」

時川監督 「普通は、そんなことないんですけどね(笑)」

藤原 「……みたいですね(笑)」
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時川監督 「全て大黒座で撮影しようとしたって言うことなんですよ。嘘ついて他所の映画館で後から撮ることも出来るんですけど、この映画はその場所で撮ることに拘ったんです。撮影最後の日に、もう壊し始めちゃうと言う……凄くドラマティックでした」

MC 重機が入って来ちゃったそうですね?

時川監督 「吃驚しました。「こんな時に入るの!?」って。スタッフとか泣き出しちゃいましたよ」

藤原 「短い間だったんですけど撮影させていただいて……一日中、大黒座にいたりもしたので……壊される時は悲しかったですし、そこで働いていた方々が涙ぐんでいらっしゃるのを見ると、「こう言う場所をお借りしてやらせてもらってるんだ……頑張らなきゃ」って凄く身が引き締まりましたね」
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MC 撮影の現場は、大黒座の皆さんも一緒だったんですね

益田 「一つの作品が出来るのは、皆のエネルギーが結集しないとパワーが出ないんですね。映画をヒットさせるとかじゃなくて、一つの目標に向かって作ってました」

時川監督 「そもそも映画って、やっぱりお金儲けの為で……例えるなら「この原作だったら売れてるから、このくらい儲かるだろう」って成り立つものだと思うんですよ。僕らのこれは、「映画館が潰れるから、何か撮って欲しい」からスタートしてて……益田さんはもう、「儲かるかどうかも分からないけどやるわよ!」って……」

益田 「もう、「銀行振込してる暇がないから現金持ってきて!」くらいの(笑)」

時川監督 「そんな勢いでしたよね、生々しいですけど(笑)」

益田 「ここ名演小劇場も元々は新劇の劇場から始まって、作品が上映される度に支配人の島津(秀雄)さんは「いつやめようか」なんて仰ってるんですが……それでも続いてるって、凄いなと思います」

MC 完成した映画を御覧になって、藤原さんは如何でした?
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藤原 「自身の演技については、撮影したのが1年前ですし色々反省点はあったんですけど……物語として観て、こんなにも沢山の映画館が無くなって行っちゃってるんだと言うことを初めて知って、それが本当に悲しいですよね。昔はそれだけ愛されていたのに……」

時川監督 「『シネマの天使』は、全国で頑張っている名演小劇場のような個性的な映画館を応援するための物でもあると思っているんです」

MC 劇中の“チラシ”は、本物なんですか?

時川監督 「10%くらいは松竹さんからお借りした物ですが、残りは8人くらいのグラフィックデザイナーさんにお願いしたオリジナルです。ポスターも、全部オリジナルです」

MC あれだけの量の映画が大黒座で掛かっていたのかと、大変な効果を挙げていたと思います

時川監督 「ありがとうございます。大変な量なんですが、美術監督の部谷(京子)さんのもと、大黒座のスタッフの方が貼ってくださってました……1週間くらいずっと貼ってたんじゃないかと思います」

藤原 「私は、ミッキー(カーチス)さんがチラシを一枚貼るところが凄い好きで……その場面をイメージして、劇中“わーーっ!”ってなってました」

時川監督 「映画館を閉館する真面目な人間のシリアスな話も出来ると思うんですが、それはちょっと後ろ向きだし暗いかと思って、出来れば色んな人の夢とか希望が同時進行で描けるような温かい物語にしたかったんです。映画って、夢みたいなものじゃないですか」

MC 最後に、皆さんにとって映画館とは?

藤原 「私は岡山県出身なんですけど、岡山でも凄い田舎の方で、映画館に行くのに車で3~40分掛かっちゃうような所だったので、映画館の思い出って言うのがそんなに無かったんですよ。今回この作品に関わらせてもらって、映画館で映画を観ると言う事は特別なことなんだと感じました。私の中で、一番の“映画館の思い出”になりました。心が温かくなる映画だと思いますし、皆さんの“映画館の思い出”と照らし合わせて、今一度「映画館で映画を観る」ことについて考えていただけたらと思います」

益田 「私は高山(岐阜県 飛騨地方)出身なんですが、旭座と言う映画館が昨年閉館してしまい、とても寂しいです。私は40歳の時に一本の日本とイランの合作映画を作りまして、一つの映画製作が人生を変え、家族に迷惑を掛け続けております。しかし、映画を観てくださった人が同窓会のように集まって、映画を観る度に話し合い心を通じ合うことが出来る場……それが映画館だと思ってます」

時川監督 「僕の叔母は呉の映画館で働いてまして、子供の頃から行ってました。「最近忙しいから映画を観に行けない」「YouTubeで観れるから映画館で観ない」って、もしかして映画館で観る映画が100%だとしたら、DVDやネットで観る映画は6~70%しか味わえてないかも知れない……そのロスは、差は凄いと思いますんで、是非この映画を通じて映画館で映画を観る楽しさを再発見してもらえたらなと思います」

大阪・梅田の“天使が住む場所”の舞台挨拶に登壇するため、大急ぎで名古屋を後にしなければならない一行の背中に今一度盛大な拍手が送られると、名演小劇場に住む“天使”がニッコリと微笑んだ気がした。

取材 高橋アツシ

『シネマの天使』公式サイト http://cinemaangel.jp

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