“劇メンタリー”、はじめました 『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』鑑賞記


“劇メンタリー”、はじめました
――『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』鑑賞記――
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“フェイクドキュメンタリー”と言うジャンルに、凄く違和感を持っていた。
と言っても、フェイクドキュメンタリー作品に嫌悪感を抱いていると言う意味ではない。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(監督:ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス/1997年/81分)も『クローバーフィールド』(監督:マット・リーヴス/2008年/85分)も、好きな作品だ。もっとも、『食人族』(監督:ルッジェロ・デオダート/1983年/95分)は当時フェイクではないドキュメンタリーと思い込んで観て、心底震え上がった口であるが。
筆者が持つ違和感とは、単に“フェイクドキュメンタリー”と言う語感に対してである。恐らくは、“フェイク”と言う単語のマイナスイメージが強すぎる(と、筆者は感じてしまう)為であろう。
それならば、“モキュメンタリー(Mockumentary)”と言う用語を使えば済むだけの話なのだが、如何せん愛着を持って使用するほど馴染める単語とも思えず、何か相応しい用語はないかと模索していた。

と言うのも、日本には“フェイクドキュメンタリー”の名手・白石晃士監督がいるからである。『ノロイ』(2005年/115分)、『オカルト』(2009年/110分)、『超・悪人』(2011年/90分)、そして『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズ(2012年~)とその手腕は冴え渡り、『ある優しき殺人者の記録』(2014年/86分)では一つの到達点を見た感がある。そんな鬼才・白石監督の作品群をマイナスイメージのある(と、筆者は思っている)フェイクドキュメンタリーと呼称するのは凄く抵抗があり、それに替わる単語を探し求めていた。
そんな用語は遂に見つけられなかったが、その代わり新語を思い付くことが出来た。“劇メンタリー”……如何であろう。モキュメンタリーと同じく所謂かばん語だが、日本語の語感が微妙にマッチして、作者自身は気に入っている。
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』(2015年/89分)が世を騒がせている頃に思い付いたこの単語を使用するのを心待ちにしていたのだが、その機会は存外早く訪れた。
白石晃士監督は、最新作で“劇メンタリー”の新たなる金字塔を打ち建てたのだ。その名も、『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』。『コワすぎ!』は装いも新たに新シリーズに突入し、工藤 仁ディレクター(大迫茂生)、市川実穂AD(久保山智夏)、田代正嗣カメラマン(白石晃士)が帰ってきたのである。

シネマスコーレ(名古屋市 中村区)では、2015年7月18日より『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』シリーズ『FILE-01【恐怖降臨!コックリさん】』(2015年/81分)、『FILE-02【暗黒奇譚!蛇女の怪】』(2015年/92分)及び、各回終了後にスピンオフ作品2作(『REST』『PLEASE』)の上映が始まり、7月19日は白石晃士監督、大迫茂生氏、久保山智夏氏の御三方が舞台挨拶に立った。

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――『超コワすぎ!』となって、特にこの『FILE-02』は、『コワすぎ!』の最高傑作だと思います(司会進行:シネマスコーレ坪井篤史氏)
白石「Twitterでいつものエゴサーチをすると(笑)、非常に評判が好くて嬉しい限りです」
――どうして蛇女だったんですか?
白石「メーカーとの打ち合わせでモチーフを何にするかは決めてるんですが、その時「蛇女ってどうですか?」って話が出たんです。当時“コワすぎ 蛇女”で検索すると、見世物小屋で蛇を喰いちぎる蛇女さんのイラストとかがズラッと出てきてたらしいんですね。そこから、昔読んで恐かった楳図かずお先生の『へび女』が結びついて……そんな感じだったと思います」
――『コワすぎ!』シリーズも9本目になりますね
白石「おかげさまで、2012年から始まって3年で本編9本、スピンオフも9本、それにこないだ『生でコワすぎ!』って番外編も作って……作りすぎですよ、本当に(笑)」

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――今回、あの工藤が恋愛指南までするんですよね。『FILE-01【恐怖降臨!コックリさん】』のスピンオフ(『REST』)も観ていただくと、本当に観方が変わると思いますので(笑)
大迫「衝撃度で行くと、過去最大級くらいの……」
白石「そう感じた方もいるみたいですよね」
久保山「観終わった後、しばらく開いた口が塞がらなかったですもん(笑)」
白石「『コックリさん』と言えば、“新菜”役で出てた紅甘ちゃんが昨日渋谷(アップリンク)で『FILE-02』を観てくれたそうで、「市川がカッコいい!」って言ってました」
久保山「お、嬉しいです」
大迫「何だか……随分強くなりましたよね」
久保山「女性っぽさが出てるんじゃないかと思うんですけどね、自分としては。恋をしてる誰かを手伝ってあげたいって言う“お姐さん”的な部分が出たのかな、と」
白石「と言いつつ、武器を持って出て行く、と言う(笑)」
久保山「(大笑)。それはまぁ……工藤さんが頼りないですからね(笑)」
大迫「工藤が「お前、モノにしてえんだろ?」って言ってる時、市川の「言い方が乱暴ですよ……好きなんですよね?」って言い方が物凄い優しくて……ちょっと何か、萌えましたね。凄い母性を感じる、良いトーンだったと思います」
久保山「(大笑)……ありがとうございます。何か……何か、痒い(大笑)」
――水澤(紳吾)さんは、最初から決まっていたんですか?
白石「いえ、最初は若い男の子を考えてたんです。でもプロデューサーが「水澤さんなんてどうでしょう……でも、年齢的に違いますよね?」って言ってきて、「水澤さん?あ、おじさんと少女ってのもアリだな!」と……より痛々しいって言うか(笑)」
――水澤さんがお二人に追及されるシーン、凄いですよね
大迫「あれ、泣く予定じゃなかったですもんね(笑)」
白石「でもきっと、水澤さんは最初から泣くつもりでしたよ、あれは」
久保山「(笑)。吃驚しましたもんね」
大迫「え、泣いちゃうの?って(笑)。なに言ってるか分からないし(笑)」
――叩かれてく度に眼が寂しそうになってくとこは、水澤さん凄いな、と思いました(笑)
白石「あそこは、完全にカツアゲの構図ですよね(場内笑)」
大迫「凄い不穏な画ですもんね(笑)」
久保山「楽しかったんですけどね、個人的に(大笑)」

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――『FILE-02』の方のスピンオフ(『PLEASE』)も、最近撮ったんですよね?
白石「アップリンクでの公開の数日前に撮影して……」
――凄いですねぇ……1日くらいで?
久保山「……半日?」
白石「昼に久保山さんのエピソード(『PLEASE』)を撮って、夜に大迫さんの方(『REST』)を」
久保山「3~4時間くらいでした?」
白石「いや、何だかんだで4~5時間くらい掛かりましたかね。今後の『超コワすぎ!』シリーズをちょっと示唆するような感じになってます」
大迫「出てきた方が、ね……」
――そうですね。シリーズ御覧になってる方は、誰だか気付いたと思いますが
大迫「笑って観てられなくなるかも知れませんね(笑)」
――最後に一言ずつお願いします
白石「『超コワすぎ!』は今回を境に、多分来年の夏以降じゃないと私が製作できない感じなので、『FILE-03』があるとしたら皆さんのお目に掛かるのは多分再来年に入ってしまうんじゃないかと思われます。ですので、この後のファンミーティングにも参加していただいて、骨の髄まで満たしていただいた上でお待ちいただければと思います」
大迫「今回は前の『コワすぎ!』シリーズとは違い、後ろ盾のない……」
白石「……“背景がない”ってことですよね?ヤクザじゃないですもんね(笑)?」
大迫「そうです、ちょっと言葉を間違えましたが(笑)……背景が何もない、ただ勢いだけの男と言うキャラクターを引っさげて今後もやって行きます。皆さん是非応援お願いいたします」
久保山「新シリーズ『超コワすぎ!』になっても、こうしてお席を埋め尽くしていただいて、本当にどうもありがとうございます。間が空いても、今後も頑張ります」

この時点で時計は23時近くになっており、白石監督が口にしたその後のファンミーティング【真夜中のコワすぎ!通信】は、予定を1時間以上超えて26:30過ぎまで繰り広げられた。最後まで残った観客は、『コワすぎ!』ワールドを文字通り骨の髄まで味わい尽くした夜であった。

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シネマスコーレ『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01【恐怖降臨!コックリさん】』、『FILE-02【暗黒奇譚!蛇女の怪】』の上映は、7月24日(金)まで。21日(火)までは舞台挨拶が行われ、スピンオフ作品は『REST』が『FILE-01』の、『PLEASE』が『FILE-02』の後に連日上映される。
新たなる“劇メンタリーの金字塔”、決して御観逃しなきよう!

取材:高橋アツシ

『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』公式サイト
シネマスコーレ公式サイト

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