10 1/2(テン・ハーフ)は魔法のサイズ『靴職人と魔法のミシン』レビュー


kutsu
――10 1/2(テン・ハーフ)は魔法のサイズ―― 『靴職人と魔法のミシン』レビュー

トム・マッカーシー――『グッドナイト&グッドラック』(2005年/93分/監督:ジョージ・クルーニー)『父親たちの星条旗』(2006年/132分/監督:クリント・イーストウッド)など演技者として活躍する一方、『扉をたたく人』(2007年/103分)では脚本・監督業を務め映画ファンを唸らせた多才な映画人。
そんなトム・マッカーシー監督の新作『靴職人と魔法のミシン』(2014年/98分/原題:『The Cobbler』)は、自らのオリジナル・シナリオ(共同名義:ポール・サド)によるハートフル・ヒューマン・コメディだ。

『靴職人と魔法のミシン』Story:
ニューヨークの下町で代々続く小さな靴修理店を営むマックスは、単調な毎日をはてしなくリピートするように生きてきた中年男。ある日、愛用のミシンが故障し、先祖伝来の旧式ミシンで仕上げた靴を試し履きした彼は、鏡を覗き込んでびっくり仰天。何と自分とは似ても似つかぬその靴の持ち主に変身していたのだ!かくして”魔法のミシン”を手に入れたマックスは、世代も人種も異なる他人の人生を疑似体験し、かつてない刺激的で痛快な日々を満喫していく。やがてちょっとした親孝行をきっかけに、相次ぐトラブルに見舞われたマックスの行く手には、本当に人生が一変するほどの大事件が待っていた……。

マックス役のアダム・サンドラーの演技が、とにかく素晴らしい。冴えない職人、恋人もいないマザコン中年男マックスが、ひょんなことから人生が劇的に変わる“魔法”に気付いてからの躍動感、焦燥感……そんなマッカーシー監督が手掛けた脚本の持つ魅力を、余すことなく表現している。
共演陣も観逃せない。レオン役のクリフ・“メソッド・マン”・スミス、カーメン役のメロニー・ディアス、エレーン役のエレン・バーキン、エミリアーノ役のダン・スティーヴンス……アダム・サンドラーと共に、見事に“大人のファンタジー”を紡いでみせる。

そして、ダスティン・ホフマン、リン・コーエン、スティーヴ・ブシェミと言った“映画界の至宝”が、素晴らしい。ともすれば荒唐無稽に過ぎる物語に、大いなる説得力と、堪らない感動を齎してくれる。かくして、映画全体を覆うファンタジー要素は甘くなりすぎず、人生の機微に触れ辛酸を舐めた大人も涙する“ビター・テイスト”を漂わせる。毎度のことではあるが、トム・マッカーシー監督の手腕には本当に驚かされる。

『靴職人と魔法のミシン』は、全ての“働き者”たちに希望と勇気を与え、全ての“子ども”たちに感謝と祝福を届ける。
『靴職人と魔法のミシン』の“魔法”は、未来への一歩を踏みだす力をあなたに貸してくれるはずだ。

文 高橋アツシ

『靴職人と魔法のミシン』
6月5日よりTOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー。6月13日より伏見ミリオン座にて公開。
配給:ロングライド
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公式サイト http://kutsushokunin.jp/

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