それならいっそ僕ら・・『トイレのピエタ』松永大司監督スペシャルインタビュー


toilet_01恋愛名言に心をぎゅっとわしづかみされるファンが多い、人気ロックバンド「RADWIMPS(らっどうぃんぷす)」。そのボーカル・野田洋次郎が、俳優デビューで初主演を務める映画『トイレのピエタ』が6月6日(水)より封切りされます!公開に先駆けて、本作が長編劇映画デビューとなる松永大司監督にインタビューを行いました。
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Q:アーティストとして活躍されている野田さんを、主役に選定された理由はなぜでしょうか??
松永監督:「『トイレのピエタ』の主役は、絵を描く人なんですけども、普通の役者よりも、日々自発的に表現をしている人の方が、説得力があるんじゃないかという話で、ミュージシャンがいいなってなりました。設定が28歳なので、その前後のミュージシャンの方をリストアップして、色々な音楽を聴いて、YouTubeでライブ映像とかを観て、その時、洋次郎が作る歌の死生観が凄く良かったんです。ライブでの姿は、妖艶というか、艶があるのがとても良くて、この人、凄く魅力的だなと思って。僕が書いたシナリオのっていう役を演じることが出来る中身を持っている人だと感じました」

Q:艶っぽさを活かすといいますか、思い描いたキャラクターに向かって、どのように演出をされたのでしょうか??
松永監督:「2013年の春くらいに、(洋次郎に)オファーをさせてもらって、その時に、洋次郎の方から「やります」と言ってくれて、その年の夏から秋にかけて撮影の予定だったんです。ただ、スケジュール的に厳しくなって、1年伸びました。その1年の間、月に2・3回は、洋次郎とふたりでご飯を一緒に食べたりして、色々な話をたくさんしました。映画の話というよりは、僕のことや、洋次郎がどんな人なのかを、お互いに知るために話をしていて、そこで、園田宏っていう人物像の共有が、凄く出来ていたので、ほとんどそういう意味では、(演出は)なかったです」

Q:野田さんから、園田宏をこういう感じでっていう提案は、何かありましたか??
松永監督:「具体的に、役での提案っていうのはなかったです。撮影に入るギリギリまでシナリオを書いていたので、シナリオを変える度に、これはどうかな?って聞くと、はこうは言わないんじゃないかなっていう確認くらいでしたね。映画は監督のものであるっていう、立ち位置でいてくれたし、これは共感できる、できないってこともはっきり言ってくれて」
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Q:撮影に入る前から、相思相愛のパートナーという関係だったのでしょうか??
松永監督:「恋愛とは違うけど、自分にとっての初長編劇映画の主役を任せる人だったので、そういう関係だと思います(笑)。やっぱり、RADWIMPS野田洋次郎として積み上げてきたものがある中で、全く別のものに足を踏み入れるって、決して簡単なことじゃないじゃないですか。そういう人が、「やる」って言ってくれたことに対する、僕の覚悟というか、責任もすごくある。お互いに嘘を付かないでいたかったから、色々なことを言い合えるような関係を作りました。楽しい時間だけでは、もちろんなかったですけど、それがあるから、本当に良い関係になれているなと思います」

Q:野田さん、杉咲さんをキャスティングされた時、松永監督の頭の中で、画が浮かんでいたシーンはありますか??
松永監督:「ワンカットで撮っているところです。病院の外の自転車置き場で、真衣に「どこかご飯食べに行こう」って言われるシーンや、夜のプールで喧嘩し合うところも、最初からこういうものにしたいっていうのが、シナリオの段階からありました」
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Q:プールに金魚を放って、泳ぐシーンがとても印象的ですが、これは監督自身が『ウォーターボーイズ』にご出演されていた時に、得られたヒントが基になっているんでしょうか??
松永監督:「凄いところから引っ張ってきますね(笑)。全然そんなことないです。プールの中で、何かしたかったっていうのはありますけど、杉咲扮する真衣という人の、唯一の気休めというか、心を休める場所として、どこがいいかなと思った時に、水の中が良かったんです。金魚は、シナリオの途中で追加したんですけど、純粋に綺麗だなと思って。なんかめちゃくちゃじゃないですか??(笑)
金魚屋さんで売っている、狭い水槽で生きている金魚が、(プールの)塩素の中で、すぐに死んじゃうかもしれないけど、小さなところで生きているよりも、大きなところで自由に動けた方が、気持ちが良くて、幸せなんじゃないかなって。それ(金魚)がと凄くリンクしていて、生きる時間は短いけど、とても伸び伸びと泳ぐことが出来る。何かから解放してあげるっていうシーンにしたいなあと」

Q:色々な葛藤を経て形になった本作を、一番みてほしい方はいらっしゃいますか??
松永監督:「生きているって、楽しいことばかりじゃなくて、ほとんど辛いことばかりじゃないですか。生きていくのが、めんどくさい、日々の人生がつまらないと思っているような人たちが、この映画をみて、自分の人生の中にも、些細なことだけど素敵だなと思える瞬間があることを、感じでもらえるものになったらいいなと。10人みて、10人が、面白いと思う映画ではないかもしれない。でも、そのうちのひとりに、凄く深くまで届いて、何かをちょっと考えるきっかけになったらと思います」
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Q:主人公がつまらなそうな顔をしているシーンが多かったと思うんですが、松永監督ご自身がそういう風に生きていた時期があるとして、その時に、何か想い描いていたものはありますか??
松永監督:「僕もずっと、大学卒業してから8年くらい、ビルの窓ふき(の仕事)をしていたんです。その時の僕は、ほど、つまらない顔はしていなかったと思うんですけど(笑)。でも自分も割とぶっきら棒な方なので、もしかしたら、同じような感じだったかもしれません。色々なことを斜めにみたり、僕は違うって思ったりとか。洋次郎にも、って監督自身だよね、って言われることがあって、自分でも本当にそうだなって思います」

Q:脚本を書かれて、今度小説として発売されますよね??
松永監督:「脚本も監督も小説も僕が作っているので、根本は一緒なんですけど、やっぱり別のものだと思っています。小説の方は、映画でカットした20シーンくらいがほとんど戻っています。これはどういうことかなっていうことが、小説は、言葉で大分補填してあります。小説では僕が思う世の中への不満を、園田宏に言わせてます(笑)。映画の方が、そこはオブラートに包まれて、キレイなシーンが沢山あるんですが、小説は意外と、トゲトゲしてます」

Q:手塚治虫さんの病床日記から、インスパイアされたということですが、出会った時にここが刺さったという、エピソードがあれば教えてください。
松永監督:「本当に10年以上前に、実家のリビングで無防備に、ぼーとしていた時、『トイレのピエタ』のアイディアがあるのをみて、ばっと起きて、一気にメモしたんです。何に惹かれたか、その時は言葉に出来なかったんですけど、トイレっていう誰もが毎日行く、排せつする場所で、最後の時間を費やして、トイレの天井にピエタ像を描く。浄化と昇天、上と下みたいなことで、とても小さな世界に無限の宇宙が広がっているって凄いと思ったんです。それを強烈に覚えてます」

Q:作画監督とはどのようなやり取りをして最後の絵を作っていきましたか??
松永監督:「林田さんっていう、普段は映画美術をされている方に、今回は美術監督ではなく、作画として入ってもらっていて、自分の絵のアイディアをたくさん伝えました。本当に相反することを沢山言ってましたね(笑)。最初に描き始めるところ、描いている途中、一番最後の三段階の絵を軸として作っていて、林田さんから最終形の絵を、こういうのはどうですか??っていわれて、でも、は最終形を目指して描いている訳ではないんですよ。彼は描いていく中で変化して最終形に到達するんです。「林田さん、これって、ここに行こうとして描いている絵ですよね??だから嫌です」って。でもそれって矛盾している訳ですよ(笑)。だから、どうしたらいいのかなって、いっぱいいっぱい話しました。そしてあるところまで見えてきてた時点で、そこから先のディテールは林田さんを信じました。最後の最後はお任せします、と」

Q:主題歌:RADWIMPSの「ピクニック」がとても印象的です。撮影後に依頼されたものですか??
toilet_02.jpg松永監督:「撮影に入る前に僕から「洋次郎の声で、映画終わらせたいな」って話をしました。今回は、洋次郎はミュージシャンではなく、演じる側として参加しているから、歌うってことをお願いするのはちょっと違うかなって思って、「カバー曲なんかは歌ってくれたりするのかな?」って話したら、「カバーを歌うんだったら、僕は自分で作りたいよ」って言ってくれました。そして撮影が終わってから、洋次郎が自分の、園田宏として生きた時間を、歌にしてくれたんです。だから全部(のフレーズが)好きです。これをもらった時、泣きましたからね。この映画の全部を歌ってくれて、嬉しいなあって。
この曲が『トイレのピエタ』のエンドロールにあることで、本当に映画の厚みが増しています。それくらいシンクロしているんです。曲を聴きながら今までのシーンが蘇ってくる。凄いですよ、本当に。これ(曲)も含めて映画の一部だと思います」

取材:佐藤ありす

松永大司監督の、長編劇映画第一回監督作品『トイレのピエタ』の公開を記念して、これまでとこれからの松永大司をたどる過去作品を一挙上映するスペシャル企画「松永大司監督七番勝負」が、公開直前の5月30日(土)から6月5日(金)の一週間、渋谷・アップリンクにて開催されます。7夜連続で、青木崇高、内田慈、岡山天音、門脇麦、手塚眞、ピュ〜ぴる、松江哲明、ほかスペシャルゲストが登壇予定!(※ゲストは予告なしに変更になる可能性もあります)
最新作『トイレのピエタ』と合わせて、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね♪

上映作品
『ピュ~ぴる』(2011年/93分)
『MMAドキュメンタリー HYBRID』(2013年/104分)
『GOSPEL』(2014年/56分)
◎短編集
『かぞく』(2012年/20分)
『おとこのこ』(2011年/30分)
『死と恋と波と』(2014年/28分)

特集上映「松永大司監督七番勝負」
日時:2015/5/30(土)~6/5(金)
料金:一律¥1,000 ※『トイレのピエタ』の前売券をご提示で1作品¥800
会場:渋谷アップリンク・FACTORY(1F),X(2F)
http://www.uplink.co.jp/movie/2015/37379

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最後に、松永大司監督からサイン入りプレスシートをいただきました!!
みなさまからの応募、お待ちしています~♪

・『トイレのピエタ』松永大司監督サイン入りプレスシート:2名さま

 

*プレゼントの応募は終了致しました。たくさんのご応募、ありがとうございました。
*当選者の発表は、プレゼントの発送をもって代えさせていただきます。
*応募時の個人情報は、プレゼントの発送以外の目的には使用いたしません。

【STORY】
最期の夏、世界にしがみつくように、恋をした。
余命3か月を宣告された宏(野田洋次郎)は、出会ったばかりの女子高生・真衣(杉咲花)にすぐに死のうかと言われるものの、死ぬことはできなかった。美術大学を卒業後、窓を拭くアルバイトをしながら何となく生きてきた宏だったが、死を目前にしながら純粋な真衣に惹かれていく。
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『トイレのピエタ』
監督・脚本:松永大司(劇場用長編映画第一回監督作品)
出演:野田洋次郎 / 杉咲花 リリー・フランキー
/ 市川紗椰 古舘寛治 森下能幸 澤田陸 MEGUMI 岩松了 / 大竹しのぶ(友情出演) / 宮沢りえ
主題歌:RADWIMPS「ピクニック」
原案:手塚治虫
配給:松竹メディア事業部
(C) 2015「トイレのピエタ」製作委員会
6月6日(土)より、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー!
http://www.shochiku.co.jp/toilet/

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