“映画熱サイクル”、はじまる ―『東京戯曲』鑑賞記―


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“映画熱サイクル”、はじまる ――『東京戯曲』鑑賞記――

シネマスコーレ(名古屋市 中村区)では7月12日より、『第1回ニューインディーズ映画・総選挙』と銘打った企画上映が行われている。観客の5段階による採点・動員数を集計し、1位を獲った作品はリバイバル上映されるお祭り企画だ。
2014年7月20日16:00、シネマスコーレ前には黒山の人だかりが出来ていた。この日の“インディーズ総選挙”にノミネートされている作品は、平波 亘監督最新作にして話題作『東京戯曲』。しかも4人と言う大所帯での舞台挨拶が行われるとあって、上映時間が近付くにつれ人山は益々大きくなっていた。(左より 手島昭一プロデューサー、富士たくや、関口崇則、平波 亘監督)

『東京戯曲』ストーリー:
戯曲作家・梢は、知人の演劇を観に行った折に、妻・歩美から突然別れを告げられる。梢は歩美が、自分の仕事相手である演出家と不貞を働いていたことを突き止める。それでも別れたくない梢は、すべてを取り戻すべく奔走するのだが……
そんな夫婦の危機に呼応するように、周囲の演劇人たちの人間関係も慌ただしく動きはじめ、ついには執筆中の戯曲に登場する恋人たちまでもが現実で思いのままに動き出し――。果たして梢は歩美の愛を取り戻せるのか?そして現実と虚構の狭間で揺れる演劇人たちの恋の行方はどうなるのか?

坪井篤史(司会進行:シネマスコーレ・スタッフ) 「この作品がどのように出来上がったか、きっかけを教えてください」

手島昭一プロデューサー 「元々今とは違う団体でワークショップをやってたんです。自分たちの好きな監督さんをお呼びして映画を作ろうって言う企画がありまして、その中の1つとして撮られたのが『東京戯曲』です。そもそもは、短編だったんですよ(笑)」

坪井 「なのに、83分の長編を撮ったと(笑)」

平波 亘監督 「ワークショップには40人くらいの役者さんが来てくれて、そこから選抜したんです…偉そうな事したんですけど(笑)…選んで、そこからお話を考えて作ったって言うのが、正しい経緯なんですけど。元々は、企画も予算も短編なんで、大変でした(笑)。撮影期間は、6日間です」

手島 「平波さんって、色んな所で助監督をやられてるじゃないですか。助監督の眼を持ってるっていうのは、やっぱり凄く大きいんですよ」

平波 「最初にワークショップを4日間やらせてもらった時に、台本を用意して行ったんですよ。その時の3シーンくらいは、映画の中でのシーンが含まれてましたね。「抜粋だ」って言って持って行ったものの、それ以上書いてなかったんですけど(笑)。そもそも、自分の体験した離婚とか…」

坪井 「おっと…日曜日の夕方ですが、大変重いテーマに行くんですね?」

平波 「ワークショップを行って撮らせてもらうって言うのは初めてのことだったので、僕も何かを放出しないといけないなと思って、ずっとずっとやりたかった“離婚ネタ”をやる時期が来たかなと思って(場内笑)」

『青すぎたギルティー』(2010年/81分)・『労働者階級の悪役』(2012年/68分)・『ウィンターズ・レコード』(2013年/26分)と、作品を発表する度にシネフィルを唸らせてきた平波監督。最新作の『東京戯曲』は、観ていて痛くなる新感覚エンターテイメントである。スクリーンを通して観客の胸に迫る“痛み”の正体の一部を垣間見た思いであったが、それは飽くまで『東京戯曲』の魅力の一部分に過ぎない。20140721b

坪井 「じゃあ、関口さんは“平波さん役”だったんですね」

関口崇則(梢 役)「物凄いしんどかったです…ただただ大変でしたね(苦笑)。離婚の話じゃないですか…僕は撮影した年に結婚しまして(場内笑)」

平波 「そう言う悪意もあったと思います(場内爆笑)」

坪井 「富士さんは、作品の“1番手”と言う役柄ですね」

富士たくや(富岡 役) 「台本を読んで、「一番最初は、ちょっとヤバいでしょ!」とは思いました(笑)。途中でちょっと出てもう終わり、みたいなのが一番好きなんですよ(場内笑)」

平波 「富士たくやさんが演じる人って、本当にダメなんですよ(笑)。“ダメ”の象徴を、最初に見せると言いますか(場内笑)」

梢と、歩美(太宰美緒)――
薫(ミネオショウ)と、静(大沢まりを)――
富岡と、理子(福田らん)――
清盛(猪爪尚紀)と、絵里(古内啓子)――
バランスとアンバランスが奏でる群像劇に迷い込んだ観衆は、目を廻しつつも抗いがたい魅力に翻弄されることになる。

坪井 「手島さんは、今後も平波さんの作品をプロデュースして行くことは考えてるんですか?」

手島 「やりたいです!…全然決まってないですけど。平波さんは、温かい人なので。真っ直ぐなんですよね」

平波 「今回初めてこうして単独上映してみて、手島さん居なかったらと思うと本当にありがたいです」

坪井 「平波さんの監督作で単独上映って、この『東京戯曲』が初めてなんですか?」

平波 「初めてですね。僕は自分の低予算で作った映画が立派に一本立ちするなんてとてもとても、とか思ってたんで…『東京戯曲』も最初に新宿のK’s cinemaの方が気に入ってくれなかったら、こう言うことにはなってなかったと思います」

坪井 「関口さんは、監督のことについて如何ですか?」

関口 「“熱い”と思います。直接的には見せないですけど、伝わってくるものがあります」

坪井 「富士さんは?」

富士 「凄い…“熱い”です」

平波 「それ言えばいいと思ってない?(場内爆笑)」

平波監督の想いをスタッフ・演者が受け止めた時、作品の温度は沸点を越える。
熱い映画を劇場が認め、観る者の体温が融点を越えたなら、作品の熱量は加速度的に上昇する。
そんな“映画熱サイクル”に、あなたも加わってみないか。
平波監督・手島プロデューサーによると、『東京戯曲』は全国のスクリーンで上映が予定されているそうだ。
今後の情報を、どうかお見逃し無く!

取材:高橋アツシ

『東京戯曲』公式サイト http://www.tokyo-gikyoku.com/
シネマスコーレ公式サイト http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/home.htm

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