誰がアイドルを殺したか?『アイドル・イズ・デッド -ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』体験記


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誰がアイドルを殺したか?
--『アイドル・イズ・デッド -ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』体験記--

ひきこもりから立ち直ったノンちゃん(ヒラノノゾミ)は、レッスン場を主催。研究生を募り、BiS(新生アイドル研究会)再生を目指す。
ムショ仲間・コッピ(國武綾)から極秘情報を得たルイ(プー・ルイ)は、極刑を免れるためルドヴィコ療法…もとい、リードベック療法を被験する。
放射能漏れを引き起こした発電所の再稼働を目論むハピネス電力は、アイドルグループ『エレクトリック☆キス』(三浦透子・柳英里紗・金子沙織)を使い世論を操作、邪魔者を排除していく。
暗殺現場を目の当たりにしたユフ(テラシマユフ)は、騒ぎに乗じて脱出。自身のアイデンティティを、激しく優等生的に自問する。
組織を裏切った技術者が遺した赤子は、アイスクリームで生計を立てるスーパー・オーバーオール娘ミッチェル(ミチバヤシリオ)に成長する。

……レインダンスやシッチェス辺りの映画祭のコンペに集いしツワモノ自主映画の作品紹介の如き風情であるが、驚くなかれ上記の文章は全て同じ作品を紹介したものなのだ。

『アイドル・イズ・デッド -ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』(以下、『IID2』)
偶像らしからぬパンキッシュな活動で人気を博すアイドルグループ、BiS主演の衝撃作『アイドル・イズ・デッド』(以下、『IID』)の続編であり、監督・脚本は2作品共に『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』の加藤行宏監督である。

「まずは、『IID』と言う作品が創られた経緯についてお話しましょうか?」
『IID』シリーズの企画を担当したSPOTTED PRODUCTIONS代表・直井卓俊氏は話し始めた。名古屋地区『IID2』公開初日である2014年2月8日、シネマスコーレのシートは補助席まで埋まる満席であった。(左より、國武綾、加藤行宏監督、直井卓俊)

直井「元々は、映画と音楽のコラボレーション『MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)』の企画の中で、加藤監督に何か音楽映画を……と言うことで、BiSと後もう一つパンクバンドはどうかと相談したんだよね?」
加藤行宏監督「その二つなら……ってことで、BiSを選んだんですよね。BiSのこと……って言うか、アイドルのこと、全然何もわかってなかったんですけど……」

加藤行宏監督は、苦い表情ながらも微笑んだ。

加藤「それが、ありがたいことに……ここスコーレでも上映させてもらったんですけど……観客賞なんかいただきまして。……で、まさかの『2』を(笑)」
直井「國武さんは、凄いタイミングで『IID』を観たんだよね?」

直井氏に話を振られ、國武綾さんはマイクを握り直した。大根仁監督『恋の渦』でゲスなギャル役を好演し、今泉力哉監督『サッドティー』も大評判、春には出演作『闇金ウシジマくん2』の公開も待ち遠しい、新進気鋭のミューズである。

國武綾「お話を頂いたので、面接だと思って伺ったんですよ……加藤監督とも、その時初めてお会いしたんです。ところが、面接ではなく衣装合わせで!着いたらすぐ、「はい、これ!」ってスウェットが出てきて、「眼鏡はどれがいい?」みたいな感じで(笑)」
加藤「実はその時、頭が回ってなくて……。「この人、なんで寝間着で来てんだろ?」って思ってたんですよね(笑)」
國武「それ、初耳です!非道い!衣装なのに(笑)で、その2日後にはもう撮影だったんで、『IID』は次の日に観ました」
直井「『IID2』の撮影前日に!?」
國武「そうなんです(笑)」
坪井篤史氏(シネマスコーレ・スタッフ)「他の監督さんと比べて、加藤監督の演出ってどうなんですか?」
國武「前の作品(『恋の渦』)は、元々ワークショップから出来た映画なんで、役作りも時間を掛けたんです……普段もギャルの格好で生活したりとか(笑)加藤監督は……って言うか『IID2』は、考える余裕がなくて(笑)台本には特別そんなこと書いてない場面で、突然踊りが始まったり……研究員(注:BiSファンのこと)の方ばかりのシーンなんで、私以外は全員できるんです。……で、「30分で覚えて!」って(笑)」
直井「……鬼だね!(笑)」
加藤「いやあ……出演者の皆さんには、本当に助けてもらいました。考えたらダメだ!って感じにしたかったんです。立ち止まって考えたりしたら、置いてかれるよ!!って……映画も、アイドル業界も(笑)」

加藤監督が言うように、『IID』も『IID2』も、現在(いま)を全力で突っ走る“疾走映画”である。出演者の全霊の“現在(いま)”がスクリーンに封じ込められた極めて密度の高いエンターテイメント作であるので、是非とも期待を持って観ていただきたいと思う。その期待を軽々と凌駕する熱量を、BiSが、演者が、研究員が、そして、加藤監督が、必ずや観る者に伝えてくれる。

そして、更なる朗報が。公開最終日2月21日のシネマスコーレは、『IID』・『IID2』の「コール&レスポンス上映」を決定したそうだ。劇中のライブシーンでのコールやサイリウム使用を解禁した「コール&レスポンス上映」は、テアトル新宿での上映最終日にも執り行われ大盛況となった上映形態である。コールやケチャで、スクリーンに焼き付いたBiSの“現在”と同化したい研究員たち、スクリーンの限界を飛び越えてくる“4D上映”をその目で観たい映画ファンたち、『アイドル・イズ・デッド -ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』公式、並びに、シネマスコーレのHPを是非ともチェックして欲しい。

蛇足ではあるが……「コール&レスポンス上映」を楽しむために、先ずは一度『IID』・『IID2』を観ておくことを強くお薦めする。それが、プロパガンダ大戦争に参戦するための“資格”である。

取材:高橋アツシ

『アイドル・イズ・デッド -ノンちゃんのプロパガンダ大戦争-』公式サイト http://idolisdead.com/
シネマスコーレ公式サイト http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/

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