スタートライン、燦燦と--『燦燦-さんさん-』鑑賞記--


A Sparkle of Lifeスタートライン、燦燦と --『燦燦-さんさん-』鑑賞記--

「淡々とした日々を燦燦(さんさん)と輝かせてくれるパートナーを探しています」
夫に先立たれ一人暮らしの鶴本たゑ(吉行和子)は、77才。亡き夫の親友で幼馴染の森口慎二(宝田明)が主催する老人クラブにも今ひとつ馴染めない。そんな彼女は、残りの人生を輝かせるため“婚活”を始める。

吉行和子、宝田明、山本學と言ったベテラン勢の演技が素晴らしい。何が素晴らしいって、齢相応の“枯れた演技”をしないのだ。若手の演者と真っ向勝負するかのような溌溂とした演技は、周囲から「もっと枯れてくれ」と言われ続ける主人公が明るく抗うのと正にシンクロし、観る者を元気にしてくれる。高齢者の婚活と言う斬新な切り口に目が行く『燦燦-さんさん-』だが、実は全うな“青春映画”である。
たゑが繰り返し口にする前向きな台詞は観る者を笑顔にし、同じ台詞を墓前で口にする時は観る者の涙を誘う。脚本も手掛ける新鋭・外山文治監督ならではの、丁寧な演出が光る名シーンである。sansan

2013年12月7日、中部地区封切初日と言う事で名演小劇場の舞台挨拶に立った、外山文治監督(画像右)、共同プロデューサー山本晃久氏(画像左)の話が聞けた。

外山監督 「ずいぶん若いな、と思われるかも知れませんが…33才の、タイトル通り“サンサン”でございます(笑)。今日は、ありがとうございます」

山本プロデューサー 「私も多分若く見えるかと思うんですが、どうでしょうか?監督と同い年なんです…僕はまだ32なんですけれども。本日はお集まりいただき、ありがとうございます」

外山 「この作品は、私が28才の時に書いた脚本なんですね。28と言えば、5年前です…5年前と言えば“婚活”と言う言葉が世の中に誕生した年でした。そして、高齢者の痛ましい事件や事故が急速に増えた時期でもありました…孤独死の問題であったり、“消えた老人たち”の問題であったり。 実は私の前の作品が、老老介護の問題を扱った社会派の作品でして…全国の高齢者団体であったり認知症の団体の方たちとコミュニケーションを取らせてもらいまして。「やりたいことはありますか?」と聞くと、「恋愛をしてみたい」って仰るかたって大変多いんですね。現実には中々難しい問題もあるのかも知れないんですが、まずは映画で出来ないかな、と思いまして」

山本 「吉行和子さん始め、宝田明さん、山本學さんの御三方…彼の第一希望だったんです。ビッグネームの役者さんですから、これはさすがにどなたかは断られるんじゃないかなと思ってたんですが、交渉する時まず彼の書いた脚本を読んでいただくと、亥の一番に吉行さんが「素晴らしい!私はこう言う物語を、こう言うことを書ける監督を待ってた。…まあ、こんなに若い監督とは思わなかったけど」、と(笑)」

外山 「新人監督が書いたオリジナルストーリー…どこかでベストセラーになったお話でもありませんので…当たって砕けろって気持ちだったんです。そしたら、本当に皆さん翌日にはOKをだ出していただきまして。おかげでこんな…名古屋で私たちが舞台挨拶に立てるまでの広がりを見せることが出来ました。本当に感謝してもし切れません」

演者さんだけでなく、映画ファンも待っていた。『燦燦-さんさん-』は、そんな作品である。
映画の登場人物よろしく、“高齢者の”、“若者の”、と言った窮屈な色眼鏡は取っ払ってみては如何だろう。爽やかな“青春映画”の名品が、また一つ増えた。

取材 高橋アツシ

『燦燦-さんさん-』
キャスト:吉行和子、宝田明、山本學ほか 脚本・監督:外山文治
Ⓒ埼玉県 /SKIPシティ 彩の国 ビジュアル プラザ
公式サイト http://sansan-eiga.com/

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