シネマdeサンバ!Vol.1 『暴力脱獄』


脱走、脱獄映画というと『大脱走』や『ショーシャンクの空に』など、名立たる名作がたくさんありますが、私がその中でも推したいのが『暴力脱獄』です。邦題だけ聞くと、暴力による過激な脱獄の感じがしますが、主人公のルークは暴力を使わず、非常にクールに脱獄を決めます。

『暴力脱獄』は刑務所からの脱獄も含めて、「定められたものに対する反抗」というテーマが散りばめられています。そういった定められたものに立ち向かっていくルークの姿は、時に厳しく、時に涼しく、時に泥臭く、とても「クール」です。私はこの映画を最初に観たとき「ルーク頑張れ!頑張れ!」と、何度もルークに声援を送っていました。そして、ルークが高い壁を乗り越えていくたびに「ルークかっこ良いな〜」と、溜め息が出ました。ルークは私の憧れる『クールな男の理想像』です。刑務所にいる仲間たち(全員、男)も、皆、ルークに憧れています。ルークがいるところに、いつも仲間たちは集まり、ルークが何かするんじゃないかとワクワクしています。

ルークは無謀だと思われる戦いに自ら進んで、挑んでいきます。そして、その戦いに勝利したとき、自分の偉業を自慢するでもなく、誰からの賛辞を欲するわけでもなく、ニコッと笑うのです。「ゆで卵50個を一時間で食える」と豪語し、パンパンに張ったお腹で、死に物狂いで完食したとき。トランプで良いカードが手元に全然無いのに、大きく勝負に出て、相手をやり込めて勝ったとき。そして、刑務所の看守に痛めつけられ、警戒されながらも、見事に脱獄したとき。
刑務所からルークがいなくなるラストシーンで、刑務所仲間は言います。
「笑ってた。最後まで笑ってた。奴は最後まで負けなかった」

私は壁にぶつかり、悶々としているときに、この台詞を思い出します。そして、ルークの笑顔を思い出し、大切なことを確認するのです。「ピンチのときこそ笑っていよう!」と。ルークは壁の向こう側から、私に向かって、いつもクールな笑顔で微笑んでくれます。

シネマdeサンバ! ~映画の情熱届けます~  ライター 松尾 哲

『暴力脱獄』
キャスト:ポール・ニューマン、ジョージ・ケネディ、J.D.キャノン
監督: スチュアート・ローゼンバーグ

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